氷室冴子さんのファンです。
氷室冴子さんのファンです。
小学6年生の頃、図書館で借りた「雑居時代」を読んだのが出会い。
中学校の図書室には氷室冴子さんのコバルト文庫がたくさんあり、特に「なんて素敵にジャパネスク」シリーズが大好きでした。
私が中高生だった頃、既に氷室冴子さんは執筆活動をお休み中で、新刊は出ていませんでした。2008年に肺癌で51歳の若さで氷室冴子さんが亡くなったニュースを知り、とてもとてもショックを受けました。まだご存命のうちに、ファンレターの1通くらい送れば良かったと悔やまれました。
大人になって読んでも、やっぱり氷室さんの作品は面白いです。多感な思春期の時期に作品と出会えて良かったです。
エッセイを読んでみた。大人になった今だから分かる共感。
氷室さんのエッセイ本を、実は今までちゃんと読んだことがなかったのですが、現在読書中です。
氷室さんがエッセイ本も出版されていたことは知っていて、10代の頃少し頁をめくった記憶はあるのですが、当時の自分は若すぎてあまり興味が持てませんでした。
「冴子の母娘草」は、氷室さんと実のお母さんとのエピソードを綴ったエッセイ本ですが、30代後半になった今、読むことができて良かったです。
母と娘の埋められない溝
結婚をして子どもを産むのが女の幸せという価値観を押し付けてくる強烈なお母さんです。
大学卒業と同時に家を出て、最初は貧乏生活をしながら職業作家の道を歩んだ氷室冴子さん。作品がベストセラーになり、人気作家になっても、結婚してない自分は母から認められない悲哀が、ユーモアの中で綴られています。
赤裸々なノンフィクションのエピソード。
氷室さんのエッセイ本は、かなり赤裸々に自分が体験したエピソードを書いているので、氷室さんのご家族の人柄や、生い立ちのこともかなり詳しく知ることができます。たぶん、今の作家さんはここまで赤裸々に自分のことを書かない気がします。今はネットの時代で、なにか文章で書くと炎上したり叩かれるので、プライバシーも考慮して安全な範囲のことしか書かない傾向があると思います。
氷室さんの本が出版されていた当時は、インターネットもそこまで発達していなかったし、本を買う読者さんしか読まないという前提で、かなり赤裸々に書いていたのかなと感じました。女であることの不利益や差別の経験、母親から結婚を押し付けられるストレスなど、やり場のない気持ちを、文章で表現することで昇華していたのでしょう。社会の現実に対する憤りの気持ちもあったでしょうが、氷室さんの文体は軽やかで巧みで、でも問題をなかったことにはさせずに向き合うエネルギーを感じます。
氷室さんは出版当時36歳くらいだったそうなので、今の自分と同じくらいの年齢です。
私は20代で結婚して4人子どもを産んでいるので、歩んできた道のりは違うのですが、10代の頃よりは人生経験を積んできたので、「この言葉を言われたら傷つくよね」「確かにこんな人っているよね」などなど、作者のエピソードに共感できたのでした。
実は子育て経験がある氷室さん。
今回読んでてびっくりしたエピソードは、氷室さんに子育ての経験がある!ということです。氷室さんは生涯独身でしたが、まだ大学生で実家にいた頃、実のお姉さんの娘(つまり姪っ子)を預かって養育していたそうです。お姉さんと夫は、仕事の都合で遠方に住んでいて、週末だけ実家に来て娘と一緒に過ごしていたそうです。氷室さんのお母さんと、氷室さん自身が、産まれたばかりの姪っ子さんを預かって養育して、2歳になるまで一緒に生活していたのだとか。赤ちゃんの可愛らしさに対する親ばかならぬ叔母ばかエピソードと、育てる大変さを経験した思い出が綴られています。20歳前後の若い時期に子育ての大変さを実感すると、その後の人生観にも少なからず影響を与えたのではと想像します。
亡くなっていても、文章を通して出会うことができる幸い。
大人になっても氷室作品を楽しめて嬉しいです。
本人が亡くなられていても、文章を通してまた出会うことができるのは幸せです。
最近、復刻版が出版されていて嬉しいです。この勢いが続くといいなぁ。