先月の参議院選挙で、れいわ新撰組に注目している中で、安冨歩さんという人のことを知りました。東大の経済学の教授の先生で、れいわ新撰組の比例代表の立候補されていた方の1人です。
戦時中の日本の富国強兵政策と、現代の経済成長政策は根本的に考え方が一緒。
国を富ませ、兵(民)を強くする。
富国強兵って言うと古くさく聞こえるから、GDP成長率何%などと表現しているけど、実は同じことを指している。
わたしたちが目指す社会のあり方は「富国強兵(経済成長)」ではない、「子供を守る」であるー。
とても共感する考え方で、どんな方なんだろうと興味を持つようになりました。
そして今回購入したこちらの本。
読んでいて、面白いなーと感じた箇所をピックアップします。
自立とは依存すること。
自立というと、「誰にも頼らないで一人で生きていくこと」と考える人が多いと思います。
でも、安冨さんは本の中で、「自立とは他の誰かに依存すること」そして、「依存する相手が増えるとき、より人は自立する」と言っています。
えー!それってどういうこと?って感じた人は、ぜひ本を買って読んでみてください。(笑)私はとても良く納得できました。
そして、自分の中にある、「何かあったら自分で解決しなきゃ」「他の人に頼ったら迷惑だよね」と思ってしまう未熟さにも気づきました。
個人的なことを書きますと、私は夫に対して頼ることは、あまり後ろめたさを感じません。でも、夫以外の人に頼るのは、なんとなく後ろめたさを感じる傾向があることに気づきました。
これはつまり、うちの夫婦関係が良好なんだと思います。でも、安冨さん流に考えると、依存する相手は増えた方がいいんですよね。というわけで、もっと積極的に友人を大事にして、お互い依存できるような関係作りをしていこうと思いました。はい。
モラハラについて。
本の中で、安冨さん自身の半生が語られているのですが、東大教授という輝かしい経歴とは裏腹に、かなりハードな人生だったことが分かります。
詳しくは本を読めば分かるのですが、配偶者からのモラルハラスメントに苦しめられていたこと、そしてその問題の根っこにあるのは、母親との関係にあると書いています。
私が(配偶者に)簡単に支配された理由は、私が母親に対して抱いている無意識の恐怖心を、配偶者によって徹底的に利用され、同じような恐怖心を抱くように操作されていたからです。母親に対する恐怖心が生じたのは、基本的に愛されていなかったからです。私の母親は、この配偶者と同様に、私の特質のある部分のみを好みつつ、私の全人格を受け入れることを徹底して拒絶していました。私に与えられたのは、無条件の愛ではなく、常に条件付きでした。何かを達成してはじめて、少しだけ、まがい物の愛情を向けられたに過ぎなかったのです。(30ページ)
母親がした仕打ちは、ものすごく残酷なことだと思います。幼い頃に、親から条件付きのまがい物の愛情しか受け取ることができなかった子供は、自己肯定感を持つことが困難になります。
そして、残念ながら、実はこういう親子関係の問題を抱えている人って、世の中で想像以上に多いような気がします。
「勉強ができないと」「スポーツができないと」何か条件を達成しないと、親から認めてもらえない。これって実際に経験した人じゃないと分からない辛さがあると思います。
私は3人の子どもを今育てていますが、「生まれてきてくれただけでありがとう」って日々感じています。もちろん、子供が何かできるようになったらそれはそれで嬉しいけれども、もし人より成長が遅かったとしても愛しい我が子であることにかわりないです。
親子関係や夫婦関係で悩んでいる人に、安富さんのこの本は助けになるかもしれません。苦しんできた当事者の視点から、どのように回復のプロセスに至ったのか、ヒントが見つかると思います。
現代日本では簡単に飢え死にしない。
人生の中でお金って必要なものですよね。老後の資金で2000万円必要である、とか、子育てのために必要な貯蓄はいくらか?など、とにかくお金を貯めないと将来が不安だという風潮が強いように感じます。
安冨さんはもちろん上記のようなことは書いていません。むしろ、「現代日本では簡単に飢え死にしないから怯えなくて大丈夫」(115ページ)と言っています。お米はお茶碗一杯で20円ほどだし、田舎で探せば家賃1万円で暮らせる物件も見つかります。生活保護というシステムもある。
いや、でもそんな生活水準で暮らすのは惨めだし、大変でしょう、という真っ当な意見もあると思いますが、ほんの74年前の戦時中の日本は、家とご飯があるだけで有難いという時代があったんですよね。現代日本に生きる私は、豊かさと便利さを享受することにあまりにも慣れ切ってしまっているんだなと、ハッとさせられる内容でした。
お金を貯めるよりも人間関係の方が大事。
安冨さんの「貨幣」についての考察の章が面白かったです。詳しくは実際に本を読んで確かめていただくのがいいと思うのですが、1つの結論として「貨幣とは他人との信頼関係を作り出すために使うべき」と言っています。
これって、ある意味世の中でよく言われていることの真逆だと思うんですよね。
今の風潮は、「将来が不安。日本の未来もどうなるかわからない。自分を守るのは自分しかいない。将来のためにせっせとお金を貯めて老後に備えるべし」という考え方が主流です。
でも安冨さんは、お金を貯めるよりも依存できる人間関係を構築した方が良いと勧めています。
お金を貯めるよりも、依存できる人間関係を構築した方が確実であり、お金を使うなら、頼れる人を増やすために使うのが、賢明な方法だ、ということは間違いないでしょう。お金でだけ結ばれる関係というのは、本当に困ったときには頼りにならないものです。(83ページ)
たしかに、お金っていくら貯めても、ある日突然なくなることもあるし、人生何があるか分からないものです。例えば自分が無一文になって困ったとき、頼れるような人はいるだろうか?と想像してみました。
他の人のために心から親切に一生懸命働いてきた人が、いざというときに助けの手が多いことは間違いないでしょう。自分の人生の時間をどのように使うのか、改めて問われた気がしました。
以上、つらつらと書きましたが、読めて良かったです。この記事では紹介しませんでしたが、「夢の実現について」「自由について」など、読んでいてハッとさせられる言葉がたくさんありました。
裏側の帯表紙の言葉。「全ての言葉の意味が、鮮やかに読み替えられる」
ステキなキャッチコピーだと思います。まさしく読後感は爽やかで、今まで見ていた世界が少し違って見えるような気がしました。
オススメの一冊です。